第3章 #2

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この町は時間が止まっているようだ。 四条通の突き当たりに面した朱塗りの古社は、京に都が移る前から祀られる歴史ある神社だ。 その奥には京都市最古の公園、円山公園が広がり、公園の中央には大きな枝垂桜がある。 東大路から西へ行くと、舞妓や芸妓が行き交う花見小路。 祇園北には、巽大明神や巽橋がある。 どの場所も私が京都に住んでいた7年前と変わらなかった。 変わらないどころか、建物は新しく塗り替えられ、商品はより京都らしく蘇り、艶っぽさがましているようにも感じる。 歴史的な文化や景観を守る人の想いが、京都の時を止めているのだろう。 過去を思い出そうとすると、現代の場面がぴったりと当てはまる。 日記を読んだせいかもしれない。 制服を着て、この町を歩いた17歳の自分の気持ちがありありと浮かび上がってくるようだった。
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