第4章 #2

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しまった。拓斗の説教が始まってしまった。 拓斗が持っているほうは、トリックを楽しむためのスケートボードで、拓斗たちはそれをクルーザーと呼ぶ。 わたしが借りているのは、クルーザーよりも一回り小さい。町乗り用のミニクルーザーで、ペニーというらしい。 「初心者は、パークから勝手に出て行くなよ」 「はーい」 観光客には優しい祇園の町だが、町の子どもには優しくない。 遊ぶところが少なくて、子どもの数も学校もどんどん減っていっている。 煌びやかな町を見る度に、わたしたちが住む場所ではなくなっていく気がして、少し寂しく思っていた。 なので、拓斗や友達が公園で遊んでいる姿を見ると、ホッとしてしまう。 まだここは、わたしたちの町なのだと思えて。
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