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時々、兄弟がいたらこんな感じなのかな……と拓斗を見ながら思っていた。
それほど、拓斗はわたしにとって家族のように近い存在だった。
「膝、めっちゃ血、出てる」
見慣れた茶色の髪が目の前に来た。しゃがみ込んだ拓斗がわたしの膝小僧を覗き込んでいる。拓斗の言うとおり、両膝から血が出ていた。その赤色は染みのように広がっていく。
「大丈夫、ですか?」
その時、わたしたちの真上から聞き覚えのない声がした。
声のした方に目をやると、そこに知らない男の人の顔があった。
「えっと」
誰だっけ。と思いながら、わたしは、記憶を整理する。
突然、感じた痛みによって、一瞬の記憶が飛んでしまっていたからだ。
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