第4章 #2

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いつもは追いかけてくるように見える月を、今日のわたしはなぜか追いかけたくなったのだ。 幻想的な色をした満月を、もっと近くで見てみたい。そう直感で思った。 でも、そんなことを言ったら、「高校生になってもお前は」と呆れる拓斗の顔が目に浮かんだので、わたしはスケボーの練習と嘘をついて、月が大きく見える場所を目指し、ここへとやってきたんだ。 慣れないスケボーはどんどん速度を速めていき、制御不能になってしまったわたしは、新橋まで走ってきてしまい、 そして――……。 そうだ。ここに、この人が立っていた。 大きな枝垂れ柳の影が、彼にかかっていた。 そのせいで、私には、彼の存在が直前になるまで見えなくて。 『灯里!! 前、人がいる!!』 拓斗の声で気づいたが、時はすでに遅かった。 『どうしよう!! 止められない!!』 ダメだ、ぶつかる――。 そう思った時、わたしは…… その人に衝突する前に、自ら転ぶ道を選んだのだ。
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