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「乗って」
こちらを向いた広い背中が、わたしに言う。
「いいです! いいです!」
わたしは彼には見えているはずもないのに、ブンブンと首を横に振りながら答えた。
誰かの背中に乗るなんて、とんでもない!
「ほんと平気です!」
「大丈夫」
「ほんと。大丈夫じゃないんです!」
重いから!
「それくらいの重さなら平気」
「わかるんですか?」
あえて言葉にしなかった言葉を読み取られて、驚きのあまり素直に聞いてしまった。
「なんとなくだけど」
「いえ、ほんとに大丈夫ですから」
わたしたちの会話を遮るようにそう言ったのは、拓斗だった。
拓斗は、彼の背に手を置いて言った。
「こいつのせいなので、自分で歩かせます」
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