13人が本棚に入れています
本棚に追加
「灯里です」
“君”と呼ばれたことがやけに恥ずかしく思えて、わたしは自分の名前を告げた。
「わたしの名前は、深山灯里」
「あかり、か」
呟くように彼が言う。わたしは聞き返してしまった。
「あなたは?」
「俺は……コウ」
彼は、自分の名を告げた後、ふっと目線を上げた。
彼の目に大きな青い月が映り込み、切れ長の瞳がブルーになった。
再びわたしに目をやると、彼の瞳は黒と青が重なって、青っぽいグレ―に見えた。
「巽コウ」
吸い込まれる、と思った。
彼の瞳に、声に、青色の月影を背負ったその姿に。
わたしは一瞬、吸い込まれた。
最初のコメントを投稿しよう!