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第4章ー2 #2
そう言い終わると、わたしは卵焼きを口に運ぶ。
ここのお弁当屋さんの卵焼き、甘くてとても美味しい。何度食べても頬っぺたが落ちそうになる。頬に手を当てて、卵焼きの味に感動していると、コウが言った。
「物理学の先生なんだよな?」
「うん。詳しいね。あれ? わたし、そこまで話したっけ?」
「いや、昨日いた女の子から聞いた、宇宙物理学の先生だって」
「うん。そう。家にいても、いつもレポートのチェックとかしてる。本も出してるし、原稿を書いてたり、書いてない時は、難しい本を読んだりしてるよ」
「へぇ……」
ずっと意志を感じさせないと思っていた彼のグレーの瞳が、静かに揺れている。
同じ大学の学生さんだもん、物理学に興味があるのかな?
「物理学に興味、ある?」
そっと問うた。
「かなり」
コウは目を輝かせて答える。
「じゃ、食べ終えたらいいところ連れてってあげる」
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