第4章ー3 #2

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固く閉まっていた蛇口がやっと開いたかのようなに、口から言葉の水が溢れ出てくる。 「他にもいっぱいお祭りあるよ! 全部コウに教えるつもりだったのに……!」 溢れ出る水の止め方を知らないわたしをたしなめるように「充分だよ」と彼が言う。 その優しい声色が伝える現実を受け止めると同時に、涙が溢れそうになる。 わたしは口を一文字に結んで、溢れ出そうな涙を懸命に堪える。 「いっぱい教えてもらった。京都のかき氷、夜の八坂の塔、宇宙物理学の本、それから今日見た提灯……全部、俺の知らない世界だった。すごく感動した」
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