第5章ー2 #2

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「え?」 「灯里が行きたい場所は、どこ?」 「どこって……」 京都へ来た人を観光地に案内するのが、京都人の役目だと思っていた。 だから、その人が喜ぶ場所へ、私は連れて行く。説明する。それでいいのだと思っていたから、奏の言葉に正直、驚いた。 「灯里が今、行きたい場所に、行きたい」 奏は、静かにそう言った。 その言葉に、ふと頭に浮かんだのは、一つのお寺だった。 「じゃあ、東福寺……かな」 「東福寺って?」 「東山区本町にあるの。京都最大のお寺で、紅葉の名所だって言われてる」 「紅葉……? 夏なのに?」 「うん。初夏の東福寺も綺麗なんだ……」
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