第5章ー2 #2

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紅葉の時期に、たくさんの人が集まる寺――それが、禅宗の名刹、東福寺だ。 「東福寺」という名前は、奈良の東大寺の「東」と興福寺の「福」の二文字を取って、付けられたのだという。 奈良の二つの大きなお寺に劣らないほど、規模が大きく、今もなお京都最大のお寺だ。 大通りに出てタクシーをとめようとする奏に、「今日は電車に乗らない?」と提案して、私たちは京阪祇園四条駅へと向かった。 京阪祇園四条駅から、東福寺駅まではあっという間だ。 駅に着くと、ちらほらと観光客らしき人たちがいる。 紅葉の季節に来ていたとしたら、ごったがえすであろう道も、シーズンオフの今は歩きやすかった。 私は知らない人々の顔をチラチラ見ながら、東福寺を目指した。 『東福寺はこちら』と書かれた看板通りに歩くと、東福寺の山門が見えてきた。 実は、東福寺に来たのは二回目だった。
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