10人が本棚に入れています
本棚に追加
『いや、時間をかけて赤く染まるんだよ。初夏のもみじは赤じゃない。じゃあ今度は初夏に見に来ようか』
『しょか?』
『夏の初めと言う意味だ。初夏のもみじは、青もみじというんだよ』
青もみじという言葉を初めて聞いた私は、その言葉に大変惹かれた。
『青もみじ、見てみたい!』
『じゃあ、また来よう』
『約束ね』
『約束』
約束はしたけれど、初夏に仕事がとても忙しくなる両親とはその約束は果たせず、そのまま月日は流れ、私自身、青もみじの存在を忘れていたのだ。
青い月を見るまでは。
月は白いと信じて疑わなかった私が見た、青い月。
その青い月が、青もみじの存在を思い出させてくれたのだと思う。
最初のコメントを投稿しよう!