第5章ー2 #2

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『いや、時間をかけて赤く染まるんだよ。初夏のもみじは赤じゃない。じゃあ今度は初夏に見に来ようか』 『しょか?』 『夏の初めと言う意味だ。初夏のもみじは、青もみじというんだよ』 青もみじという言葉を初めて聞いた私は、その言葉に大変惹かれた。 『青もみじ、見てみたい!』 『じゃあ、また来よう』 『約束ね』 『約束』 約束はしたけれど、初夏に仕事がとても忙しくなる両親とはその約束は果たせず、そのまま月日は流れ、私自身、青もみじの存在を忘れていたのだ。 青い月を見るまでは。 月は白いと信じて疑わなかった私が見た、青い月。 その青い月が、青もみじの存在を思い出させてくれたのだと思う。
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