第5章ー2 #2

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「灯里」 しばらくその景色を見入るように眺めていると、腰を持って引き寄せられる。 彼を見上げると、「すみません」と私を通り越した相手に小さく頭を下げた。 次に来たお客さんが、この景色が見たくて、私の隣に立ったのだ。 ついぼんやりする癖のある私を、いつも導くのが奏だ。 彼が言うように、私が彼を温かい場所へ連れて行けるとするのなら、それは奏が道を踏みしめてくれるから。 どの道を通っても、怪我のないように、事故が起こらないように、見守ってくれるから。 そんな安心感があるから、私は奏と一緒に生きていきたいと思うのだ。 後から来たカップルは、数枚写真を撮ると、「綺麗やったな~」「次はあっち行こか」とすぐにいなくなった。
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