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また二人の世界が帰ってくる。
「なぁ、灯里」
青もみじが染める鮮やかな景色を見つめながら、奏が言う。
「昨日は、……どうして泣いていたの?」
「……それは」
クッと言葉がつまる。
何も言えなくて、目を伏せた。
何事もなかったかのように流してくれたと思っていたけれど、やっぱり奏には敵わないと思った。
どんな些細な変化でも、見破ってしまう。
そして、それを絶妙のタイミングで聞いてくるのだ。
「言いたくないなら、聞かないけど」
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