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第6章 #2
そうだ……
「お父さんの部屋……」
たくさんの本がひしめき合う空間を、図書館のようだとも思い、鼻先をくすぐる本の匂いを森の中にいるようだと感じたあの日、私たちはお父さんの部屋で一緒に本を読んだ。
私は、急ぎ足でお父さんの部屋へと向い、部屋の片隅に置いたあった脚立を動かして、目的の本棚の下に置いた。脚立に登り、腕を伸ばす。
「あった……」
あの夏、コウが読んでいた本を見つけた。
人差し指を本にかけ、そっと、取り出す。その本は、夢の中で見た色より少し色褪せていた。
埃っぽい本を優しくパンパンと叩いてから、私は脚立を降りる。
こんな重い本を読んでいたんだ――。
そう思いながら、私は彼が持っていた本を、そっとめくった。
ページをパラパラとめくる。
覚えている。
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