第7章 #2

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小さく声を漏らすと彼が立ち止まり、振り返って、 「悪い。速かったな」 と言った。 「ううん」 こちらを向いたコウの背後に、たくさんのろうそくが並んで揺れている。 彼を映し出すかのように灯るオレンジ色のゆらめきに、わたしの心も揺れ動く。 右へ左へと風に揺れ、けれど、また戻ってくる。蝋の芯に添うように。 わたしは胸の奥にぽっかりと浮かんだ温かな気持ちのまま、彼の元へと近づいた。 「ごめん。お待たせ」 「あぁ」 二人で並んでろうそくをお供えして、手を合わせて、お願いごとをした。 「何をお願い事したの?」 「灯里がこれ以上、無茶をしませんようにって」 「なにそれ」
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