18人が本棚に入れています
本棚に追加
「今度は何を思いついた?」
何事もなかったかのように、柔らかく彼が言った。
コウの優しさに胸がキュッと軋む。
「花火をしようと思って」
わたしは、袋に入った花火を持ち上げて見せる。
「いいな」
やっと、彼が同意してくれた。
ろうそくに火を灯した。
透明の袋から花火を1本取りだして渡すと、コウは「ありがとう」と目じりを下げた。
わたしも1本持って、ろうそくに近づける。花火の先端はチリチリと音を立てて燃え出し、火薬に届くと、一気に火の粉の花を咲かせる。
コウが、眩しいほどの黄色に染まる。
「コウの花火、『七色変化』だって!」
「ほんとに7色も変わるのか?」
「わたし、実は数えてる。今、2色目」
「もう数えてたなんて」
隣にいる彼は短く笑って、こちらを見た。
「ちゃんと、花火見ててよ。7色あるかわからないじゃない」
「……そうだな」
最初のコメントを投稿しよう!