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言い合い、笑い合いながら、夏の夜が過ぎていく。
ひとつひとつと、夏の花が散っていく。
最後に残った花火は、赤い実をつけた線香花火だった。
「これ全部、コウにあげる」
「どうして?」
線香花火の束を差し出すと、コウが首を傾げる。
“線香花火が終わると、夏が終わりそうな気がする”
その想いは口にできなかった。
その言葉を口にすると、言葉に魂が込められて本物になりそうだったからだ。
「線香花火を束のまま火を点けたいって、昔、拓斗が言ってたから、コウもそうかなって、思って」
「……俺は違うよ」
珍しくムスッとして、コウが言った。
「俺は、1本ずつ楽しみたい。美しいものは……大切にしたい」
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