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彼の声に胸が詰まる。
やっぱりコウは、今日の日を最後にしようとしているんだ……。
彼の息遣いが聞こえるほどの距離だった。
花火を扱う指、伏せた目の形、伸ばした腕の長さ。わたしは、横目でコウのことを見ている。意識しなくても、無意識に、彼のことばかり考えている。
「灯里」
「うん」
そっと名前を呼ばれて、コウの次に火を点けた。
線香花火は揺らめきながら、互いの頬を照らす。
ふと目が合って、恥ずかしさのあまり俯いた。コウも照れたように笑った。
同じ、想いだったらいいのに――。
人は、どんどん欲張りになる。
好きだと気づいたら、コウも私のことを好きだと思って欲しいと願っている。
そんな奇跡、簡単に起きるわけがないのに……。
線香花火の赤い実がポリと落ちた。
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