最終章 #2

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気づけば、無意識にそう呟いてしまっていた。 自分の声に驚いていた。彼の瞳は、哀愁に揺れている。 どれだけ自分の気持ちに正直なんだ。正直すぎて、コウを困惑させている。 「ごめん」 そう言ったのはわたしだった。 「勝手に好きになって、ごめん」 夜は、二人の表情を見せなかった。 ただ、重苦しい空気だけが流れていて、わたしは謝るしかなかった。 その時、背中に大きな手の感触。ぐっと引き寄せられたかと思ったら、目の前にコウの喉仏が見えた。わたしは彼に抱きしめられている。 鼓動がうるさい。口から心臓が出てきそうなくらい驚いている。 倒れそうになったわけではない、転びそうになったわけでもないのに、彼はわたしを引き寄せて、自分の腕の中に包み込んでくれている。 そのことがとてつもなく嬉しくて、瞼が熱くなった。 彼の体温を近くで感じる。手を動かすことも、これ以上引っ付くことも、わたしにできないけれど、コウに抱きしめられている現実だけが、幸せだった。
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