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「……ごめん」
次の声は彼だった。
こみ上げてくる喜びに、今にも涙が溢れ出そうだった時、コウはわたしを抱いたまま、耳元でそう言った。
わたしは彼から体を離した。
至近距離で目が合うと、コウは繊細に整った顔立ちを苦しそうに歪ませて、途方にくれたように俯く。
ふっと風が吹き、ろうそくの灯を消した。静寂の暗闇の中で、彼は言った。
「もう……会えない」
ずっと、予感していた言葉を言われてしまった。
彼の表情を、輪郭を、映し出すのは、頭上に輝く大きな青い月の光だけになってしまった。
彼を彩る青が、コウ自身に見えた時、彼はゆっくりと話し出した。
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