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そう言った沙紀の横顔が、泉にいた頃よりもはっきりと見えた。
人工的な光のおかげだ。
遠くにある町の明かりと、揺れ動くネオンを見ながら、彼女が言う。
「今日はすごくいい天気だったから。絶対、夜景が綺麗だろうなって思ってて」
「うん」
「そしたら。なんだか、圭一君にも見せたくなって……」
語尾が小さくなっていた。
彼女の大きな瞳に、光の揺れ動きがうつっている。
大好きな場所だということは、何度も見たことがある景色のはずだ。
けれど、彼女は初めてそれを見たかのような目をして、夜景を眺めていた。
彼女の光を捕えた、猫のようなまるい瞳も
その上にある長い睫毛も
風に流れるつややかな髪も
通った鼻筋も
小さくて薄い唇も……
全部、綺麗だと思った。
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