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3 #2
「圭一君、見すぎ」
彼女が、照れたように笑う。
「もうおしまいにしよう。下手だし、恥ずかしいから」
そう言って、布を再び被せようとした細い手を、僕は反射的につかんだ。
「えっ」
「まだ、見たい」
「……」
「ダメ、かな?」
ダメなら諦める。
沙紀の嫌がることはしたくない。
でも、僕はどうしてもこの絵が見たかった。
大切な物を見つけたような、
ずっと前から知っていた風景のような、
不思議な気分だった。
僕は、もっと鮮明に色濃く、この絵を脳裏に
残しておきたい。
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