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「……わかった。でも、私は……喉、乾いた……かな」
彼女は途切れ途切れにそう言うと、僕から離れて小さなテーブルの前に座る。
先ほど持ってきたペットボトルの蓋を開けて、飲みだした。俯きながら少しずつお茶を飲む彼女から、僕は再び絵に目を戻した。
すぐに、僕はその絵に引き込まれた。
彼女の絵は人の心を動かす。
魂で描かれた作品は、見る人の魂をも動かす。
いつもどこか冷めていると言われてきた僕の心が、今はこんなにも熱い。
それは、沙紀が描いたからなのだろうか?
それともこの絵自身が持つ力なのだろうか?
そう考えて気づいた。
きっと僕は、この絵を描いたのが沙紀だと知らなくても、魅了されるだろう。
もし手に入るならば、ずっと手元に置いておきたい。
そして、その繊細な色使いに癒されながらも、
絵の中にある悲しみに共感するんだ。
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