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彼女は時々、多弁だった。
普段は控えめなのに、夢中になると話が止まらなくなる。
そんな彼女の話を聞いている時間は、とても楽しかった。
「圭一君って、聞き上手だよね」
ふいに沙紀が言った。
「そうかな?」
「そうだと思うよ。普段の私は、そっち側だもん。話すより、聞くほう」
「そうなんだ」
そう言われたらそんな気がする。
沙紀は、笑顔で友達の話を聞いていそうだ。
「でも時々、いっぱい喋りたくなる」
「それが、今?」
「なのかも。迷惑じゃない?」
「全然」
と僕は言った。
彼女の声を、話を、迷惑だなんて思ったことはない。
「圭一君はさ、そういうときってない? 自分が思っている自分とは、全く逆のことがしたくなる時」
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