第三章 #2

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僕にとって、月と星を見ると思い出す人は、沙紀だ。 僕はいつの間にか彼女が言った言葉までをも思い出していた。 『時々、いっぱい喋りたくなる』 そう言った沙紀の気持ちが、今の僕にはよくわかる。 それは今の僕も同じ想いだからだ。 すべてを受け入れて許してくれる婆ちゃんが傍にいてくれるから、僕は普段なら言わないようなことまで、話したくなっていた。 「婆ちゃん、あのさ……」 「ん?」 「……日向寮って、知ってる?」 「日向寮?」 婆ちゃんは少し考えてから、閃いたように言う。 「あぁ。山の上にある……施設のことかい?」 「そうだよ」
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