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先ほどまで、僕たちは日向寮で楽しい時間を過ごしていた。
二人で絵を見て、お茶を飲んで、話をして
そして、頭を撫でられて――
そこまで考えるとボッと頬が熱くなってしまう。
僕は、赤くなったであろう顔を婆ちゃんに見られないように目を逸らしながら。
「昨日、そこの子と友達になったんだ」
「そうかい」
「それで、今日も会って来た」
「うん」
頭を撫でられた感覚が甦ってくる。
ふわふわとした優しい触り方だったな。
僕の名前を呼ぶ澄んだ声と、長い睫毛の奥にある大きな瞳を思い出していた。
何の先入観も持たず、謙虚に物事を見る沙紀の瞳は、キラキラしていて、美しかった。
瞳そのものが、彼女の心のようにも見えた。
「綺麗な子なんだ。
容姿も綺麗なんだけど、それだけじゃなくて……なんていうか、心が綺麗っていうか……」
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