第三章 #2

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先ほどまで感じていた、絡みつくような息苦しい感情が溶けていく。 婆ちゃんの優しい言葉が溶かしてくれていた。 「婆ちゃん、ありがとう」 「お友達が来るときは、婆ちゃんの手作りコロッケをご馳走するからね」 「楽しみにしてる」 ――『大切な人』 婆ちゃんは沙紀のことを、友達でもなく、恋人でもなく、”大切な人”と言った。 婆ちゃんが教えてくれたその言葉は、僕が向ける沙紀への思いにピッタリだったと思った。 僕にとって沙紀は『大切な人』だ。 沙紀が誰のことを思っていても、そのことは変わらない。 だから今は、沙紀を大切にしたいと思う 自分の気持ちを大切にしようと思った。 沙紀…… と彼女を思い出す。 『お姉さんだからかな』 おどけるようにそう言った、愛らしい笑顔が脳裏に浮かんだ。
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