12人が本棚に入れています
本棚に追加
先ほどまで感じていた、絡みつくような息苦しい感情が溶けていく。
婆ちゃんの優しい言葉が溶かしてくれていた。
「婆ちゃん、ありがとう」
「お友達が来るときは、婆ちゃんの手作りコロッケをご馳走するからね」
「楽しみにしてる」
――『大切な人』
婆ちゃんは沙紀のことを、友達でもなく、恋人でもなく、”大切な人”と言った。
婆ちゃんが教えてくれたその言葉は、僕が向ける沙紀への思いにピッタリだったと思った。
僕にとって沙紀は『大切な人』だ。
沙紀が誰のことを思っていても、そのことは変わらない。
だから今は、沙紀を大切にしたいと思う
自分の気持ちを大切にしようと思った。
沙紀……
と彼女を思い出す。
『お姉さんだからかな』
おどけるようにそう言った、愛らしい笑顔が脳裏に浮かんだ。
最初のコメントを投稿しよう!