3 #2

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3 #2

* やっと、夜が来た。 「行ってきます」 僕は、小さくそう言って、そっと扉を開ける。 静かな住宅街に、パタンと引き戸式の玄関を閉める音が響いた。 高台にある婆ちゃんの家から見渡す景色は、いつもと変わらない。 濃紺色の空の下、僕は町へと歩き出した。 変わらない町並みを眺めながら、僕は嵐山の町に降りてきた。 通いなれた夜の町は、僕を出迎えてくれているかのようだ。 今宵も青い月が、僕のことを見守ってくれている。 今日も青い月光が歩く道を照らしてくれているおかげで、迷うことなく森へ向かうことができた。
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