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高校生には、敷居が高そうだと思っていたけど、今日、婆ちゃんが教えてくれたんだ。 『三条大橋のたもとのコーヒーショップにも、床が設けられてあるよ。席料もかからないから、行ってみたらどうだい?』と。 僕は行ってみたいと思った。 沙紀と一緒に、京都の夏の風物詩を満喫したい。 「ここって……」 彼女の瞳が、レンガ調の建物の上から下へと緩やかに流れるように動いた。 「初めてきた」 「マジで?」 「マジです」 彼女は、『STARBUCKS COFFEE』と書かれた店内に入ると、子どもっぽい目に光を浮かばせて、 「すごいね、これ。どうなってるの?」 ふわりとした独り言を言いながら、僕のあとをついてくる。 「あれ? 頼まないのかな」 レジ前に並ぶ長蛇の列を追い越した時、背後から声がした。 考えている事が自然と口に出ているような話し方だ。 これも独り言かなと思ったけれど、僕は顔だけ振り向いて。 「先に、席を取っておこうと思って」 「なるほど」
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