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5 #2
僕が彼女の名前を呼んだのと、彼女が声を出したのは同時だった。
彼女の瞳に涙の幕が張っていく。
それはみるみると膨れ上がり、瞬きをした瞬間、その涙は筋となり、スッと頬に流れた。
“どうして”
彼女の声にならない声が、もう一度、聞こえた気がした。
薄く開いた唇と、細い肩が震えている。
彼女は、手の中にある星飾りを見て泣いていた。
彼女の涙の意味は僕にはわからなかったけれど、僕は、彼女の涙を拭いてやりたいと思った。
そっと、右手を動かしてみる。
手が震えている。
自分の手なのに、他の人の手のようだ。
なんとか力を入れて動かした右手で、彼女の頬に流れる涙を拭こうとしたとき、彼女が一歩前に踏み出た。
ふわりと漂う甘い匂いの後、僕の胸に彼女のおでこがコツンとぶつかった。
熱い息が喉元にかかる。
心臓が爆発しそうだ。
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