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手はもう動かせなくて、僕は棒立ちのままだ。
僕に少しだけ体重を預けた沙紀は、
「どうして……」
言葉を忘れた幼子のように、何度も「どうして」を繰り返した。
そして、そのまま何も言わなくなり、静かに涙を零していた。
空には星が瞬いている。
青い月に照らされた星の欠片が降ってくる。
彼女が青い景色に薄く儚く消えてしまいそうで‥‥
僕は片手でそっと引き寄せた。
あんなに動かなかった手が、今はそうすることが当たり前のように、スッと出てきた。
僕たちは、体温を分け合った。
彼女は、僕の腕の中で、ひたすら泣き続けた。
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