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彼女は、何かを思い出すようにそう言った。 僕は言葉の真相を確かめたかったけれど、この話を掘り返し、また沙紀が泣いてしまったら…… そう思うと、聞き出すことはできなかった。 「そっか」 僕はそれだけ言って、光が伸びてくるほうを見上げた。 渡月橋のちょうど真上に、青い満月が輝いている。 嵐山の景観におもむきを添える渡月橋から見上げるブルームーンは、格別に美しかった。 橋の頭上にかかる青い満月は、嵐山の風景に溶け込んでいる。 まるで、そこに存在することが当たり前のようにも感じる。 しばらく、二人で月を見ていた。 そんな僕たちを青い光が包み込む。 ゆっくりと時間が流れていく‥‥ 「くまなき月の 渡るに 似てる」 ため息がでるほど美しい風景に見入ってしまっている僕の隣で、彼女がぽつりと呟いた。 「今の、何?」
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