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視線を横へと移して、彼女に聞いた。
彼女は僕と目を合わせて。
「昔、お母さんに教えてもらったんだ。渡月橋の名前の由来だって」
月の話をする彼女に笑顔が戻っている。
僕はホッとして、話を続けた。
「初めて聞いた。どういう意味?」
「昔、この川でね、満月の夜に船遊びをしていた天皇様が夜空を見上げて、『くまなき月の渡るに似てる』
って言ったんだって。それは今の言葉では、『月が橋の上を渡るようだ』っていう意味で」
「うん」
「月が、橋の上を渡っていくように見えたから、この橋の名前を『渡月橋』と決めたそうだよ?」
「そうなんだ」
月が渡る橋で、渡月橋か……。
なんて、綺麗な名前なんだろう。
僕たちの頭上で輝く満月は、きっと桂川が流れる東側から出てきて、橋の真上を通り、西側の山陰に隠れるのだろう。
昔の人も、この美しい景色に魅了され、その美しさに値する名を、この橋につけたのだと思った。
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