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傘の下を覗くと、白い紙は、そこで眠っていた。
誰も取りに来なかったんだな……。
沙紀の初恋の人は、今日も来なかったということになる。
それは嬉しいことのはずなのに、どうしてだろう。憂鬱な気分になっていた。
手紙が残っていたことを沙紀に告げたら、きっと寂しげな眼を見せるだろう……。
それか、昨日のように無理やり笑うかもしれない。
やたら重く感じる足を何とか動かして、彼女の元へ帰ってくる。
彼女は、僕の手の中にある白い紙を見て、「……そっか」と声を漏らした。
初めから諦めていたような、でも信じていたのに……
そんな言い方に聞こえた。
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