第4章 #2

4/28
前へ
/35ページ
次へ
「こうやって泉で遊んでいたら、せっかちな彼が、間違って来てくれるんじゃないかって」 彼女の言葉が、不意に僕の胸を直撃した。 彼女にとって“彼”とは初恋の人のことだ。 やっぱり、彼女はずっとその人のことを待っている。 泉に佇む理由も、傘を使って遊ぶ理由も、すべて、彼を想ってのことだった。 「彼とは……どうゆう出会い?」 自分の胸に大きな釘をさす行為だと、わかっていた。 でも、どうしても聞きたくなった。 「彼とは……」 彼女が夜空を見上げて、 「6年前のブルームーンの夜に、初めて出会った」 「……うん」 「その夜、ここで私を助けてくれたの」 「助ける?」 「そう。6年前のブルームーンの夜、私……泉に落ちたんだ」 「え」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加