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「こうやって泉で遊んでいたら、せっかちな彼が、間違って来てくれるんじゃないかって」
彼女の言葉が、不意に僕の胸を直撃した。
彼女にとって“彼”とは初恋の人のことだ。
やっぱり、彼女はずっとその人のことを待っている。
泉に佇む理由も、傘を使って遊ぶ理由も、すべて、彼を想ってのことだった。
「彼とは……どうゆう出会い?」
自分の胸に大きな釘をさす行為だと、わかっていた。
でも、どうしても聞きたくなった。
「彼とは……」
彼女が夜空を見上げて、
「6年前のブルームーンの夜に、初めて出会った」
「……うん」
「その夜、ここで私を助けてくれたの」
「助ける?」
「そう。6年前のブルームーンの夜、私……泉に落ちたんだ」
「え」
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