第4章 #2

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一拍の間の後、僕は言った。 「それは……遊んでいて? それとも、事故?」 「ううん。どちらでもないよ。私……わざと、落ちたの」 わざと?  6年前の沙紀は11歳だ。 11歳の少女が自ら泉に落ちるということは…… それは…… ……自ら死を望んだということ? 「ごめん」 言葉をなくした僕に、彼女が言う。 「こんな話、聞きたくないよね?」 彼女の問いに、僕は首を横に振った。 僕は、彼女の言葉を最後まで聞きたいと思った。 「聞かせて?」 そう言った僕に、彼女は「……うん」と笑顔を見せてくれた。 瞳の奥に哀愁を感じる笑みだった。
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