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僕は、彼女の言葉を聞きながら、昨日の婆ちゃんの言葉を思い出していた。
『日向寮ってさ……、どんなところ? そこにいる子どもたちは、可哀想な子どもなの?』
思ってもなかった言葉が、声になった。
沙紀を見て、そんなふうに想ったことはないのに。
『日向寮って聞くと、表情の変わる人が多いから』
初めて日向寮に行った日、沙紀から聞いた言葉が頭の片隅に残っていて、僕にそう思わせたのかもしれない。
『みんなそう言うね。あそこにいるのは、親のいない可哀想な子どもだって。問題が起きやすくて、非行に走りやすい。そんな先入観で、施設の子どもたちを見てる』
『……違うの?』
と僕は聞いた。
自分の意見ではない。
わからなかったのだ。
僕は真実を知らない。
『違うよ』
婆ちゃんは、はっきりと言った。
『日向寮の子は、可哀想な子なんかじゃない』
『……』
『可哀想なのは、大人だ』
『大人?』
『そうだ。可愛い子どもを育てられない、大人が可哀想なんだ』
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