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最終章 #2
シンプルなTシャツにジーンズ姿の彼女。
おろした黒髪は肩辺りでサラサラと流れていて、その髪に青い月の光が反射して、煌めいた。
ドロドロのスニーカーの隣に並ぶのは、僕のよりもずっと小さくて白い、スニーカー。
泉の淵に佇む彼女は、飾らなくても、流行を追っていなくても、一度見たら忘れることができないほど美しかった。
朝起きて、ふと見つけた露に濡れた朝顔の花のような
何百年前に輝いた星の光が、今の僕に届くほどの神秘的な光のような……。
夏の京都の青い夜、
突然、僕の前に現れた美しすぎる彼女は、今どこで、何をしているんだろう?
無事、里親さんのところへ行けたかな。
毎晩、トマトの実を食べてもらっているかな。
たまには、あの髪飾りを……つけてくれているかな……。
彼女の笑顔を、たたずまいを、流れる髪を、あの声を思い出し、胸の奥が熱くなる。
締め付けられて、苦しくなる。
沙紀……今、どうしてる?
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