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心をとらえる感情と対になって現れるのは、いつも沙紀だった。
前に座っている女の子の顔が沙紀に見えて、僕は小さく頭を振る。
僕が知った夏の恋に、続きはない。
一方通行だった僕の恋は、ブルームーンとともに終わりを告げた。
これ以上思っても、辛いだけだ。
だから、早く、この想いを断ち切らなきゃいけない。
もう忘れなきゃいけないんだ……。
自分にそう言い聞かせ、これ以上沙紀のことを考えないように、僕は飯をかきこんだ。
*
3人は会話に花を咲かせている。
僕はその話を聞くともなしに聞きながら、店内を見回した。
カフェは満席だった。
僕たちのような高校生から、大学生、OLさんにサラリーマン、様々な人がいる。
1人きりの人はまれで、皆誰かと一緒に昼食を取っている。
スマホを片手に持ちながら。
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