10人が本棚に入れています
本棚に追加
3 #2
走りながら見えた星空は相変わらず美しい。
その中央に輝く青い月には、白い光の陰りが見える。ブルームーンの青さが薄れていくのがわかった。
早く行かないと、沙紀が――。
過去へ戻れないと、沙紀が――。
僕は、歯を食いしばり、霞んでいく青い世界の中を駆け抜けた。
青い光に導かれることがなかったせいか、僕は森までの道を迷いに迷った。
一度目のブルームーンでは、迷うことなどなかったのに。
やはり僕は青い光に導かれて、過去へ戻っていたのだ、と確信した。
いつもの倍以上の時間をかけて、森にたどり着き、やっとの思いで茂みの中に入る。
山に入ると、風が変わっていた。匂いも違った。
あったはずの山道がなくなっていた。
一か月前、僕が歩いた山道と袖を濡らした木々の葉は、6年の歳月を経て大きく成長していた。
きっと、寮の子どもたちがいなくなったこの森は、活気をなくし、道を作る意味を持たず、ひっそりと葉と幹を大きくするしかなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!