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「……嘘、つかないで」
「ほんとだよ? 高校生になった沙紀は、とても綺麗で優しい女の子だった。友達もいて、学校も楽しいって、言ってた」
「……ほんと?」
「うん。沙紀は、一生懸命、生きていた。だから、優しい人たちが寄ってきて、その人たちに囲まれて、たくさん兄弟もできて、幸せそうに、暮らしてたよ」
そんな彼女が美しすぎて、恋をする男だっているほどだ。
「今の沙紀の世界が、すごくつらいのは、僕も知ってる。
でも、世界はきっと変わるから、生きていれば、未来は明るく輝くから」
彼女の目に、涙が溜まっていく。溢れた涙は真っ直ぐに頬に落ちた。
その涙が掠れて見える。彼女の顔がぼやけていく。
きっと、終わりの時間が近づいているのだ。
僕は沙紀の小さな手を包んで、言った。
「だから、今が、どんなに辛くても、生きて、生きて……」
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