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「美結、自分がどうしたいのかをちゃんと言わなきゃ! 大体子どもをすぐに作るかどうするか話し合わないまま、避妊を止めるってどうなの?」
まったくあの男は! とブツブツ言っているのは、親友の栞だ。
今、妊娠中の彼女にはこうして電話で時々相談に乗ってもらっている。
「美結はバリバリ働いているんだから、無計画に妊娠するわけにいかないのにね。『子どもはどうする?』って訊いたら、美結が『仕事が落ち着くまではいらない』って答えるのがわかってて、わざと訊かないのよ、きっと。」
「そうなのかな。……私、そんなこと言わないのに。」
「え?! そうなの?」
ほらね。栞も誤解している。
「だって、赤ちゃんが欲しいと思ったからって、すぐに出来るもんでもないでしょ? 『今の仕事が落ち着くまで』なんて先延ばししていたら、一生妊娠できない。仕事は次々とやってくるんだから、妊娠がわかった時点で課長や他のデザイナーに割り振るしかないよ。」
働く女性にとって結婚は計画的にできても、妊娠は計画通りになんかいかない難問だ。
ただ、うちの会社は小さいだけに、社員1人1人を大事にしてくれる。だから、妊娠中も産後も無理のない範囲で仕事が続けられるのではないかと思っている。
デザイン自体は自宅でも出来るので、打ち合わせやリサーチをチームの他のメンバーにお願いするという手もあるし。
「ねえ、基本的なことを訊いていい? 美結は赤ちゃん、欲しいの?」
「うん、欲しい。」
「欲しいんだ?」
「うん。やっぱりね、智くんの赤ちゃんが欲しい。」
栞も驚いているけど、私だって自分がこうなるなんて驚きだ。
もちろん妊婦の栞の幸せそうな姿に影響されたのもある。
でも、愛する智くんと結ばれて、一緒に暮らすようになったら、ごく自然と赤ちゃんが欲しいと思うようになった。
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