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青年は慣れた感じでカクテルを頼んでいる。あまり見てはいけないのだろうがどうしても気になり煙草をゆっくりと減らしながら時折眺めた。
すると、視線を感じたのか青年はこちらを“見た”ので男を一瞬驚き誤魔化す様にウイスキーを飲む。
微かに笑みを浮かべたように見えたが男は気のせいだと思い短くなった煙草を押し消す。が、やはり気になり見ると青年の目の前にドランブイ・トニックが置かれ男は目を丸くして呼吸が早くなる。
「お、同じ・・・?」
小さく呟いたつもりが青年に聞こえたようでドランブイ・トニックをひと口飲んでから男へと体ごと向き
「こんばんわ、荒川・・・荒川英さんですよね?」
男は初対面の青年に名前を当てられ空気を飲み喉が変な音が鳴った。
鼓動が早く何を答えたら迷っていると青年は首をかしげて。
「すみません。僕は牧野稔と言います、兄の恭太郎は知っていますよね?」
椅子から腰を上げて今にも逃げ出しそうな荒川英と言う男はニコやかに話す相手を今や恐怖の対象にしか見ていなかった。
「僕、目が見えない変わりに鼻と耳がいいんです」
ドランブイ・トニックをゆっくりと飲んで言う。稔は世間話をするかのようにリラックスしている、が、それは見ためだけで異様な雰囲気を露にしているのが分かるのは荒川と言う男だけだった。
「俺は・・・」
「僕は貴方と言う人間がどう言う人なのか知りたいだけです。」
白杖がカタンと椅子に当たり音を立てる。普段なら気にしないくらいだが今は凄く大きな音に聞こえて男をカウンターを両手で強く掴む。
カラリと自分が飲んでいたウイスキーの氷が鳴る。
一瞬のフラッシュバックが起きて目を強く閉じる。
復讐の気配とほんの小さな恋のはじまりが今この場所から始まる。
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ー終ー
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