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僅かに聴こえる程度の音量で流れるジャズがモノトーンで雰囲気を出しているBARの店内を彩る。しかし、良くあるスナックのような広さで隅にはオブジェとしてジュークボックスが立っている。
男はカウンター席の端で3杯目のウイスキーを口にすると、対角線上にあるボックス席に居るカップルの女性が何やら騒いだ。
店内は薄暗くソファの背もたれも高いので頭のテッペンしか見えないがイチャついているようだった。
コースターに音を立ててグラスを置くが向こうは聞こえていない。溜息をついてから煙草に火を点ける。
今、何時かを確認しようと腕時計を見やるとキィと店の扉が開くが男は気にせず時間を確認していると、ふわりと覚えのある香りに顔を上げた。
すると男の側を通り過ぎたのは白杖を突きカウンターの真中へと座った青年。
いや、あくまで男が“青年風”と感じただけで実際は違うかもしれないが、兎に角この薄暗いスナックじみたBARには釣り合わない。と言う事だ。
時間を確認するのを止めて煙草を吸いながら見つめる。
(同じコロンを?)
男が先程から気にしているのは“青年”ではなく“匂い”その香りは強すぎず弱すぎず仄かに甘い、優しく時には自分を叱ってくれた愛しい人を思い出す。
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