3-1 紅夜薗ジン

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 その様子をにこにこと笑いながら美柚に観察されるので、その度に睨みつけるが、最近は前ほど効果がなかった。  少し驚く程度に怯えるが、大きな瞳からはどちらかというと好奇心が窺える。ジンはこういうものとして慣れたようである。  なんなんだこの女は……。    ジンは微妙に苛立っていた。こんなことは初めてだ。微妙というのがどう処理していいのかわからない。  なにせ相手は人の苛立ちを簡単に(あお)りながらも、それに気付くことなくぼんやりしているような女なのだ。  無邪気に神経を逆なでてくる相手に、何を言ってもこっちが疲れるだけなのはこの一ヶ月ほどで身を持って知った。  ジンは溜め息をつき、諦念(ていねん)を交えて呟いた。 「たまには違うのを出せ」  はい、と明瞭に返事をすると、美柚は元気よく片付けをしだした。
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