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ちゃぷりと肩まで身体を沈めながら、レンは疲れを癒す。気持ちまでほっこりしているのは、明らかにあの少女の存在のせいだろう。
レンが以前にほんの少しの悪戯心で言ったことが、こうも楽しい場面を繰り出すとは思いもしなかった。
二人がレンのツボを押さえたように、抜けていたり意地を張ったりして、傍から見ていたら微笑ましい光景だ。毎回笑いを堪えるのが大変である。
ゆったりと浴槽に背を預けながら、湯気で白く曇った窓を眺めた。
輪郭をはっきりと映さない外の景色は、まるで自分たちの関係のようだ。
馴れ合っているつもりはなく、気を許し合っているわけでもないのに、そこに笑いがあるのはなぜだろうか。
そんな思考になんとなく浸っていると、コンコンとドアが叩かれた。
「何?」
「湯加減はいかがですか~?」
返事をすると、暢気な声とともにガラスドア越しに小さな姿が見えた。
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