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その答えと表情で、老人の素性を美柚がわかっていないことを知る。
あれだけチンピラを従えているのだから、何となくはわかっているのかもしれないが、それを気にしていないということなのだろう。
老人も教えず、美柚も詮索せず、だけど確かに信頼関係がある。つくづく呑気で、そしてわからない女だ。
この際だから、監視してからずっと気になっていたことを訊くことにした。
「なぜ父親が失踪したことを言わない?」
「それは、……心配をかけるのが嫌だから」
「相手は頼ればいいと言っていたのに」
「……そうだけど。自分でもよくわからなくて。うまく言えない」
「そうか」
それっきりまたいつものようにジンは黙りこんだ。
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