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それをいいことに美柚は睫毛を伏せ、この際だからとしっかり彼の人となりを考えてみることにした。
相変わらずジンは無表情で、何を考えているかわからない。
だが、話してみると口数が極端に少ないだけで、非情な人物ではないのがわかる。
基本、群れることを嫌っていることは確かだが、一度関わった対象には無視しきれない優しさがあるようだ。その証拠に、先ほどは誤解ではあったが助けようとしてくれた。
その行動は嬉しく、だから、名前を呼ぶことを約束させられたと同時に、文句を言われれば改めるつもりで会話も同級生にするような口調にしてみた。
だが、ジンは気にしている様子はない。
なんだが、ほっと息をつくとともに嬉しく思った。
やはり、同じ屋根の下に住んでいる者同士、ぎすぎすしているよりは柔らかな空気の中で過ごせる方がいい。
父のことを思うと不安になるけれど、悪いことばかりではないかもしれないと、美柚は無表情で横に並ぶジンをそっと見て、相変わらずの仏頂面に小さく笑った。
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