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どこか悩ましげで、ふとすると飛んでいきそうなほど切なそうに視線を伏せる。
話を聞いていなければ見逃すほどのそれは、気付いてしまえば無視できない。レンは少し躊躇い、それをふっきると静かに訊ねた。
「吉永さんは、父親を探しているの?」
「駄目でしたか?」
美柚はカップを置きぱちりと視線を合わせると、困ったように微苦笑した。
話を切り出しても冷静なそれに、逆にレンは不安を覚える。彼女の真意をはっきりさせようと疑問を直接ぶつけた。
「いや。余計なことを話さないなら勝手にすればいいよ。心配なのもわかるしね。でも、なぜ直接どこにいるか知らないのかと訊ねないの?」
「それは……、自分の状況もうまく説明できないし……」
父親の話を切り出している美柚をレンも見たことがあるが、その人に合わせてさりげなく話題にのぼらせるだけで、父や己の状況を仄めかすことはしなかった。
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