1114人が本棚に入れています
本棚に追加
4-2 月の光のもとで
** * **
月明かりの中、さっ、さっと影が移動する。
およそ人の力では上がれない高さ、そして滞空時間から見る地上を、美柚は気もそぞろに眺めていた。
見知ったはずの森は、上から見渡すと一層に闇としての影が強く押し出し、それでいて神域でもあるような清らかさをも感じさせる。その姿は見る者を殊勝な気持ちにさせた。
反対側に抱え上げられたレンに視線をやり、美柚は表情を翳らせた。
ぐったりしたレンの顔色は真っ青で、それは異様なほど白い。そこに血がべたりとこびりついており、視覚的にも美柚を不安にさせる。
ジンの元に戻っても助かるかわからない。不確かな、ただ気持ちだけが急く状態に胸が苦しくなる。今も生きているのか死んでいるのかさえわからないほど、だらりとレンは手足を放り出していた。
「着いたよ」
一気に高度を下げ、ペラ男が屋敷の門の前に降り立った。
最初のコメントを投稿しよう!